
- インタビュー記事
アパレル会社から独立後、様々な失敗を経てコスチュームジュエリーブランドを起業。圓尾瞳さんが語る、大学時代の過ごし方とは?
2022年2月25日
「行動することの大切さ」はもう聞き飽きたと思っている方はいませんか。
「よくありがちな回答ですが、それでもやはり行動することが大事だと思っている理由があります。」
そう話してくれたのは、ヨーロッパのヴィンテージを中心に行き場のないアイテムをリデザインするコスチュームジュエリーブランドの運営者であり、関西学院大学総合政策学部の先輩、圓尾瞳さん。
そんな圓尾さんが総合政策学部で学んだのは、たとえ意味がなさそうなことでも能動的に行動して、沢山の経験を積む大切さ。経験の数々はすべて今につながり、圓尾さんの生きるヒントとなっています。
社会人になっても行動を起こし続け、多くのお客様に感動を与えるブランド運営者となった圓尾さんに「大学時代の過ごし方」について教えていただきました。

株式会社ラトリエ・デ・ラ・ベルエポック 代表取締役社長。ストーリーあるものづくりをテーマに、世の中の価値があるけれど埋もれているものたちにスポットをあて、現代に馴染む形でリデザインし提案するコスチュームジュエリーブランド”maruo”を運営。
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「好き」を軸にして様々な人と繋がれる仕事
本日はよろしくお願いします。早速ですが、圓尾さんの自己紹介をお願いします。
圓尾さん
関西学院大学の総合政策学部を2012年に卒業いたしました、圓尾瞳と申します。コスチュームジュエリーブランドのmaruoを運営していて、このブランドを運営しているラトリエ・デ・ラ・ベルエポックという会社の代表もしております。よろしくお願いします。

現在のお仕事について、もう少し詳しくお聞きしてもいいですか。
圓尾さん
アクセサリーを輸入、製作そして販売する会社を運営しております。

どんなアクセサリーや作品を作っていらっしゃいますか。
圓尾さん
私たちが作っているアクセサリーは少し変わっていて、『すでに世の中に存在しているものを使ったものづくり』をコンセプトにしています。 ファッション業界はごみ問題が重要視されていますが、ゼロイチで物を作らなくても、世の中には素敵なものがあると感じているので、世の中にすでに存在している古いパーツや廃棄される予定のものをリメイクしたり、新しいデザインに作り替えたりして、現代の日本人の感覚に馴染む形に調整して、提案するアクセサリーを作っています。


なぜ今の事業を立ち上げようと思いましたか。
圓尾さん
もともと新卒採用で卸売りのアパレル会社に就職しました。当時は衣料品を買い付けるバイヤーという仕事をしていてすごく面白かったのですが、働いている中で『この仕事は私じゃなくてもできるんだろうな』、『私にしかできない仕事がしたい』と感じるようになりました。
そこで『何でもいいから私の名前で働いてみよう』と思い、まずは会社から独立してフリーランスになったんです。最初は自分に向いていることが分からなかったので、周りの人に『何でもいいから私にできそうな仕事をください』と言いました。そこでいろいろなことを試していく中で、何度も何度も失敗しましたが、アクセサリーの仕事は軌道に乗ったため、仕事を続けて少しずつ自分の好きな形に変更していき、今の形となっています。

走りながら改善を繰り返して、今の位置に辿り着いたのですね!
圓尾さん
そうですね。最初はアクセサリーをやりたいわけではなかったのですが、世の中が求めてくれたものがアクセサリーでした。当時は生きることに必死だったので、その仕事を続けて今に至りますね。

苦労されながら進んでこられて、いま自分の道を見つけられているというお話は非常に勇気をもらえるなと思いました。
圓尾さん
ありがとうございます。

今、圓尾さんはどんな役職を務めておられますか。
圓尾さん
株式会社ラトリエ・デ・ラ・ベルエポックの代表取締役社長をしております。経営はもちろんのこと、自社で販売しているアクセサリーのデザインや、アクセサリーのパーツを海外から仕入れるバイイング、直営店舗では海外ブランドの取り扱いをしているので、その仕入れも行っています。

デザインから仕入れまで幅広く担当されるんですね。
圓尾さん
商品の製作は内職さんや製作スタッフの方にお願いしますが、私はクリエイションすることにすごく魅力を感じていて、この仕事をライフワークにしているので、自分自身が楽しさを感じている部分は残しながら仕事をしようと意識しています。


お仕事をしていて、楽しい時ややりがいを感じる時があれば教えてください。
圓尾さん
先ほども申し上げましたように、私の場合は好きが高じて今の仕事になっているので、自分自身がいいなと思うものに共感してくださる方と一緒にお仕事ができています。また、お客様もブランドの背景に想いを馳せて、いいなと思ってくれる方が非常に多いですね。こうして好きを軸に、いろいろな方と繋がれることはやりがいと楽しさを感じている部分です。

たしかに、ブランドのこだわりが伝わってファンになってくれる人がいれば、喜びを直接感じられますよね。
圓尾さん
そうなんです!『廃棄されるものをリメイクして新しい形で届ける』というブランド背景に共感してくださっている方々はお客様にもかかわらず、ブランドを広めようとしてくれます。このようにお客様と私たちスタッフとの境界線がすごく曖昧になっているのですが、ブランドを通して家族や友達、知り合いとも違う新しいつながりができていることに楽しさを感じます。

ブランドのこだわりを理解してもらうために工夫していることはありますか。
圓尾さん
私たちが最も大事にしているのは1対1のコミュニケーションです。認知してもらうためには広告を出すことが最も手っ取り早いと思いますが、私たちのブランドは今まで一度も広告を出したことがありません。それよりも対面あるいはオンライン上で会って、1対1のコミュニケーションを熱量高く行うことを大事にしていています。
本当にお客様の要望に寄り添った接客ができれば、お客様に満足以上の感情を感じてもらうことができると考えていて。すごく感動する買い物を体験すると、その感動を人に伝えたくなるはずなので、そこで口コミが生まれて広がりを作っていくと思っています。だからこそ私たちは一見遠回りに見える1対1の接客をとても大事にしています。

お客様との1対1をやり切れるブランドさんはなかなかないと思います。お客様と真剣に向き合われているのですね。
圓尾さん
本当にどぶ板営業というか…(笑)。 もちろん大変ですが、ただ物を買ってもらうのではなく、お客様が私たちの価値観に共感したり、商品を身につけることで自信がわいたりするように考えるのがブランドだと思っていて。相手が求めていることを考えながら寄り添って接客することで、お客様にとっても価値ある時間になるのかなと考えています。


アクセサリーやブランドづくりの仕事に関わるにはどのような準備やスキル、知識が必要でしょうか。
圓尾さん
私がいる業界は一般的な言い方ではアクセサリー業界になりますが、もう少し大きな枠で捉え直すと、自分の好きなことを仕事にする業界だと感じていて。自分の好きなことを仕事にするために必要な準備は、『自分が得意なこと』と『自分が好きなこと』が重なる円集合の真ん中部分を探すことだと思っています。

自分が好きで得意なことができていると夢中になるので、すごく成長できますね。
圓尾さん
そうですね。私がここまで仕事を続けてこられたのは、ヨーロッパに行くことや製作に没頭することが楽しいからです。『努力は夢中にかなわない』と思っているので、まずは皆さんも夢中になれることを見つけてみてください。それが仕事につながるかもしれません。

好きなことを仕事にするために大事なことを教えてくださり、ありがとうございます。
関西学院大学総合政策学部は「未来につながる点を沢山打てる」場所
総合政策学部での学びは今どのように活きていますか。
圓尾さん
今の仕事に必要な英語は間違いなく総合政策学部での学びが活きていると思っています。総合政策学部には、英語教育プログラムいわゆるEC(英語コミュニケーション)の授業があります。この授業は1,2年生の必修科目で、リーディング、スピーキング、ライティング、リスニングをします。しかも、それが週に4回もあって…。内容も頻度もスパルタな授業でしたが、あのときの学びが今すごく役立っています。
高校生までの英語の授業は受け身で、センター試験(現在は大学入学共通テスト)で役立つ読み書きのスキルがあれば大学入試に合格できました。しかしECの授業は全て英語で進行され、テキストも英語、学生が話す言語も英語のみという全て英語の空間です。つまり英語をインプットするだけでよかった高校時代までと違って、アウトプットを求められる環境になったんですよね。
実際、この2年間はとても大変でしたが、いま留学をしなくても海外で仕事ができているのはECで培われた2年間が大きな要因なので、総合政策学部の授業は本当に良かったなと思っています!


それでは、学生生活で一番学んだことを教えてください。
圓尾さん
学生生活で一番学んだことは行動することの大切さです。よくありがちな回答ですが、それでもやはり大事だと思っている理由があります。
私が大学時代に一番感じたことは、受動的に大学に行くだけでいろいろな新しい出会いがある環境で、能動的に自分の興味があることに参加すると出会える人がどんどん広がっていくということです。大学時代はボーナスタイムで時間が沢山あるので、自分の好きなことや興味のあることに対してどんどん行動していただきたいと思います。

とてもいいメッセージをありがとうございます。最後に、今の学生に伝えたいことがあれば教えてください。
圓尾さん
お伝えしたいことは二つあります。
一つはとにかくいろいろなアルバイトをしてみてほしいと思っています。振り返ってみて大学生の頃がすごい期間だと思うのは、いろいろな業種や職業の仕事をアルバイトで短期間に経験できる点です。社会人になると転職はハードルが高く、複数の業種や職種を経験することは難しいです。会社内の部署移動があっても数年に1回ほどのため、様々な仕事をすることは中々できません。だからこそ、いろいろなアルバイトをして、自分の向き不向きなどをふるいにかけていく作業を大学時代に沢山やってほしいなと思います。
もう一つは、稼いだお金を貯金しなくてもいいということです。私は自分の好きなことや興味のあることにのめり込むためにお金を使うのがいいと考えています。自分の興味があることは将来に関係ないかもと思うかもしれませんが、そんな方に『Connecting The Dots』というスティーブ・ジョブズの言葉をお伝えしたいと思います。学生時代にいろいろなところに点を打って、いろいろな経験をすれば、未来では点が意外なところでつながるかもしれないということです。この言葉のように、学生時代に単に興味が湧くことや純粋に心惹かれることに対してどんどん行動すれば素敵な未来が開けると思っています。皆さんを応援しています。

沢山行動して失敗しながら今の仕事にたどり着いたというお話があったように、圓尾さんは社会に出てからも行動することを実践されていますね。
圓尾さん
そうですね、なんとかなるので!

すごく説得力があります。本日は本当にありがとうございました。
圓尾さん
こちらこそ貴重な機会をありがとうございました。


関西学院大学総合政策学部の先輩である、圓尾瞳さん。
今、好きなことを仕事にできているのは、学生時代も社会人になってからも興味のあることに対して能動的に行動し、自分の知る世界を広げていったから。
高校生のみなさんは、将来に繋がることは何かを考えて行動しなければならないと思っていませんか。
確かにその考えも大切かもしれませんが、ぜひ何事も行動に移してみてください。
好きなことや興味のあることにどんどん挑戦する。そんな大学時代の経験一つ一つが思ってもみなかった場面で繋がり、自分を支えてくれるときがきっと来るはずだから。
<取材=諸富稜(スタジオMOVEDOOR代表)>