loading

 

  • インタビュー記事

不動産会社でオフィスビルやホテルなどの開発を担当。藤井有佳さんが語る「偶然を引き寄せる」大学生活の過ごし方とは?

2022年1月27日

みなさんは、偶然は誰かが勝手にもたらしてくれるものだと思いますか?

「全く予想していなかった不動産の仕事に携わるようになり、最初は少し戸惑いました」そう話してくれたのは、学生時代に国際政策学科で学び、現在は積水ハウス株式会社にて都市開発の部署に所属する関西学院大学総合政策学部の先輩、藤井有佳さん。

今では仕事がきっかけで自分のプライベートも成り立っていると感じるほどで、友人に大阪のビルについて語ってしまうこともあるそう。

そんな藤井さんが総合政策学部で学んだのは、少しでも興味がある分野には何でも足を踏み入れてみる大切さ。

自分からアクションを起こし続け、幅広い学びを得た学生時代を経て、現在は不動産会社で活躍する藤井さんに「偶然を引き寄せる大学生活の過ごし方」について教えていただきました。

【藤井有佳】
積水ハウス株式会社で新卒より都市開発系の部署に配属。これまでオフィスビルのテナント営業や運営管理、道の駅周辺でのホテル開発、分譲マンション販売等の仕事に携わる。2020年に第一子を出産し現在育休中。

インタビュー動画はコチラ

予想外の入社先で不動産に魅了される日々

藤井さん、本日はよろしくお願いします。

藤井さん

よろしくお願いします。

それでは、自己紹介をお願いします。

藤井さん

藤井有佳と言います。大学時代の苗字は半田です。卒業年度は2013年で、当時は国際政策学科の小西ゼミに所属していました。現在は住宅メーカーの積水ハウスに勤めていますが、昨年11月に出産して現在は育休を取得しています。

目を覚ましたお子さんを気にかけながらも、丁寧にお答えくださる藤井さん。

どんな会社で働いているか、もう少し詳しくお聞きしてもいいですか。

藤井さん

積水ハウスというと、住宅メーカーのなかでもかなりのシェアがあるので、ご存じの方も多いと思います。一般的にはお家を建てたいお客様に当社を検討していただいて、一戸建てを建てることが最もコアな事業になっています。  

私が所属する開発事業部は、国内のオフィスビルやホテル、賃貸マンションの開発・運用等を担当しており、いわゆる不動産デベロッパーといわれる開発型ビジネスの仕事をしています。積水ハウスは開発型ビジネス、戸建住宅事業などの請負型ビジネスのほかに、ストック型ビジネスといって、リフォーム事業や、お客様が既に入居しているマンションの賃貸や仲介をすることで収入を得る不動産フィー事業等も展開しており、全国で沢山の賃貸マンションの管理も行っています。

デベロッパーとは、土地や街の開発を事業の主体とする不動産会社のこと。

ストック型ビジネスとは、継続的に収益を得られる仕組みを作るビジネスのこと。

不動産フィー事業とは、お客様にサービスを提供する対価として手数料を受け取るビジネスのこと。

そのなかで、藤井さんはどのような役職、担当を務めておられますか。

藤井さん

私が働いている開発事業部は、先ほど申し上げた通り、オフィスビルやホテル、賃貸マンションの開発をしています。開発と一口に言っても、開発用地探しから、不動産を所有した後は、オフィスビルを借りてくれるテナントを探す仕事など幅広い業務がある部署です。

また、当社では不動産を開発するだけでなく、数年保有した後にグループ会社の積水ハウス・リート投資法人などに売却して収益を得ることもあり、用地取得から、不動産の開発、運用、売却という一連の流れをすべて一つの部署で行っています。そんな中、私はまず入社して3年間はオフィスビルのテナントを見つける『リーシング』というテナント営業の仕事に携わっていました。その後の3年間は、ホテルやオフィス、店舗で構成されるビルのテナントさんの管理や、修繕のための工事発注などビル全体の運用や、リートへの売却の仕事をしていました。

その後、道の駅の隣接地に外資系企業マリオットグループのホテルを開業する『TripBase道の駅プロジェクト』に携わりました。例えば、京都府京丹波町にあるホテルの開業にあたって、借りている行政所有土地の契約関係手続きや、道の駅関係者との打ち合わせをしていました。このプロジェクトは現在はまだ限られた数府県の道の駅でしか展開していませんが、将来的にはどんどんホテルの数を増やし、全国的な展開を目指しています。

直近では、社内のジョブローテーションの一環で大阪市内のタワーマンションの販売を1年ほど経験しました。

お仕事をしていて、楽しい時ややりがいを感じる時はありますか。

藤井さん

元々、不動産にそこまで興味があったわけではなくて、就職活動ではメーカーを幅広く受けていました。グローバルに活躍したいという想いから、素材、重工分野を中心に比較的大企業メーカーを受けていたのですが、たまたまご縁があって積水ハウスに入り、全く予想していなかった不動産の仕事に携わるようになったんです。最初は少し戸惑いもありましたが、幅広い事柄に触れられる業務の魅力、例えば、最初に携わったオフィスビルのテナント営業では、業種の異なる数多くの企業の方とお会いする機会があり、直接企業の担当者の方とお会いして打ち合わせする中で、業種ごとの個性や業務内容などいろいろな世界を知れることが楽しかったです。

また、不動産の仕事は街を歩くことで得られる生の情報が多く、最初の頃はどんどん外に出て競合となる他社のオフィスビルやエリアの特徴などを覚えるように言われていたので、大阪の御堂筋に建つビルの名前を全て言えるくらい大阪の主要オフィス街を歩き回りましたね。

楽しい瞬間についてですが、仕事で歩き回っている途中に見つけた素敵なお店やエリアにプライベートでご飯を食べに行ったり、街歩きがすっかり趣味になったので、旅行などで訪れた街でも着目する視点が変わりました。元々、地図を見ることや歴史が好きということもあり、仕事でその街の歴史や成り立ちなどに触れる瞬間はいつもワクワクします。特に大阪の街で長く仕事をしていて、住んでもいたので、中之島や北浜の水辺エリアや、数多く残るレトロビルなど大阪には大好きな場所がたくさんできました。また、街歩きが好きすぎて歩きながら大阪のビルについて友人に解説してしまうこともよくあったのですが(笑)、私のおかげで大阪がすごく好きになったと言ってくれる友人もいて嬉しかったです。今ではこの仕事がきっかけで自分のプライベートも成り立っていると感じるほど充実した社会人生活が送れています。

藤井さん

ビルの運用を担当していた時代は管理会社やリートの窓口となり、いろいろな物事の調整業務やテナントさんのクレーム対応、台風や地震などの災害や、事故発生時の対応を行いました。いろいろな人との関わりの中で、自分よりもかなり年上の方に仕事のお願いをすることも多く、言い回しなど伝え方に気を遣っていました。また、仕事量が多くはじめは一つ一つのことに時間がかかり大変でしたが、数をこなし経験値が上がることで自信がもてましたし、効率的に仕事が進められるようにもなり、楽しく仕事をすることができていたと思います。

リートとは、投資者から集めた資金で不動産への投資を行うこと。一般的に「不動産投資信託」と呼ぶ。

藤井さん

不動産の仕事は情報をいかに掴むかが大切と言われていますが、人と信頼関係を築き、重要な情報をもらうことが大切な仕事なので、とにかくいろいろな人に会いに行きます。例えば入社1年目から自分でオフィスビルの仲介会社さんにアポを取り、会いに回っていました。大阪にいた当時は、紹介から入会した「KGリアルターズクラブ」という、不動産業界などで活躍する関学OB・OGの方が所属する社会人サークルによく行っていましたね。さらに、不動産業界は女性が少ないのですが、少ないながらも女性同士のつながりとして女子会にも参加していました。平日仕事終わりの夜、仕事関係の人と食事に行き、交流や情報交換をすることが多く、スケジュールはいつもびっしりで大変でしたが、充実した日々だったなと思います。

いろいろなお仕事、役職を経験された藤井さんだからこその、すごく濃いお話ですね!それでは、デベロッパーで働くために必要な準備やスキル、経験などがあれば教えてください。

藤井さん

先ほども申し上げたように、学生時代はこの業界に携わりたいと思って就職活動をしていたわけではありません。ただ、入社決定後に会社から宅建やファイナンシャルプランナーの資格を取るように求められたので、それらの勉強を始めました。

宅建とは、宅地建物取引士の略称で不動産取引の専門家であることを示す国家資格。

ファイナンシャルプランナーとは、税金から投資、住宅ローン、不動産、教育、相続までお金に関する幅広い知識を活かし、相談を受けた顧客に的確なアドバイスを行う仕事。

藤井さん

基本的に営業の仕事は、会社に利益が出るよう働きかけをするなかで、特に仕事を取ってくることが大きな役割となりますが、その実情はいろいろな物事や関係者の調整役であることも多いので、人とのコミュニケーション能力が重要かなと常々思っています。不動産関係の仕事であれば、私の場合は社内の技術・設計担当や総務担当、社外のビル管理会社、設計会社、工事請負会社(ゼネコン)など、いろいろな人たちとのやり取りを通して問題を解決し、進めていくことが多いので、いつも伝え方を考えながら仕事をしています。

私は学生時代にサークルやゼミ、インターンなどで社会人の方と関わる機会をある程度経験として持てていたため、最低限のビジネスマナーやコミュニケーション能力は学生時代から培われていたように感じており、社会人になってから困ることはそこまでなかったように思います。不動産業界に限らずどんな仕事であっても、学生時代にインターンなどいろいろな活動を通して社会を知る経験を少しでも持てていたら、社会人になったときの苦労が少ないかもしれません。

ゼネコンとは、General Contractor の略称で総合建設業者のこと。ビルやトンネル、商業施設などの大型建築物を幅広く造る。

関西学院大学総合政策学部は自分次第でいくらでも視野を広げられる場所

総合政策学部での学びは今どのように活きていますか。

藤井さん

幅広い業務を何事も楽しんでやることができているのは、総合政策学部での幅広い学びの経験が活きていると思っています。私は学生時代、国際協力に興味があり、国連で働いていた先生方の授業を受講して、主に途上国支援などについて勉強していたのですが、周りの友達の影響でメディア政策学科の授業を受講することもありました。また、大学2年生の終わりに東日本大震災が発生したことや、大学3年生のときにJICA関西でインターンを経験したことが影響して、大学4年生の時に都市政策入門や災害復興学なども受講しました。現在の仕事において国際関係に直接つながる事柄は少ないですが、世界の国々に多少精通している強み、環境問題や防災、都市政策系のことは大学時代の勉強が活きていると思います。

総合政策学部では幅広い学問に触れられるので、入学当初に興味があった分野はもちろん、在学中に興味を持った学問の授業も後から受けることができます。私は既に卒業単位が足りていましたが、卒業間近でも興味がある授業を受講して、すごく良かったと思っています。

学生生活で最も学んだことは何ですか。

藤井さん

学生時代、主にサークル(国際系の学生団体)、ゼミ活動を精力的に行っており、とにかく忙しい毎日だったので、いろいろなことを同時並行して進めていくスキルや対人関係、調整能力が学べたと思っています。

また、ゼミの小西先生から『プランド・ハップンスタンス』というキャリア論で語られる言葉を教わりました。キャリアの8割が偶然の出来事によって形成されると言われているほど変化の激しい今の時代に、自分で偶然の出来事を引き寄せるように働きかけて、積極的にキャリア形成の機会を創出するという意味です。

私は広島出身で知り合いゼロの状態から学生生活をスタートしましたが、興味があること、ワクワクする自分の心を信じて、いろいろな授業を取り、複数のサークルやゼミに所属しました。おかげで、どんどん友達ができて、その友達がきっかけで全学部生が参加できる学際ゼミ、キャリアゼミや、海外ボランティア、短期語学留学などいろいろなプログラムへの参加を経験して、すごく豊かな学生生活が送れたと思っています。これらの経験は今の仕事にも少なからずつながっているので、これまでの『偶然がきっかけの出来事』が自分のキャリア形成に役立っていると思います。

最後に今の学生に伝えたいことがあれば教えてください。

藤井さん

とにかくちょっとでも興味があることは、なるべく挑戦してみてほしいと思います。キャパオーバーになるくらいでもいいと思うので、勉強に限らず、サークルやアルバイトなど何でも、自分がちょっとでもワクワクすることに出会ったら、そこに足を踏み入れてほしいなと思います。

最近の私はというと、20代前半くらいまでは好奇心が強く、いろいろなことに挑戦していたと思うのですが、子どもができて家にいることが多いからか、以前のようにワクワクすることにあまり出会えていません…。やはり三田で過ごしたあの4年間は日常的に周りにワクワクがあふれており、時間が全然足りず、とても刺激的な環境だったんだなと思います。何か一つのことにどっぷりハマることもいいと思いますが、いろいろな経験ができるのは学生時代ならではであり、特に総合政策学部では幅広い勉強ができるので、ぜひいろいろなことに挑戦してみてほしいなと思います。

藤井有佳さん、ありがとうございました!

関西学院大学総合政策学部の先輩である、藤井有佳さん。

積水ハウス株式会社で不動産のエキスパートとして幅広い業務を楽しめているのは、興味関心のままに自ら幅広い学びと経験を重ね、偶然の出来事を引き寄せた大学生活が今のキャリアにつながっているから。

高校生のみなさん、ちょっと興味があるくらいで新しい世界に足を踏み入れてもいいのかなと躊躇する気持ちがありませんか。

足を踏み入れないことも選択肢の一つですが、足を踏み入れなければ見られない世界が必ずあります。

幅広い分野を学び、いろいろな経験ができる総合政策学部で、自分の好奇心のままに行動してみませんか。その行動が想像を超えた出来事をもたらし、みなさんの将来の選択肢を増やしてくれるはずだから。

<取材=諸富稜(スタジオMOVEDOOR代表)>