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  • インタビュー記事

女性起業家と2児の母を両立。大自然の中で働く菊地恵理子さんの”自分が好きな環境を作るコツ”とは?

2021年12月21日

「将来、どんなふうに働こうかな」と漠然と不安になっていませんか?

「自分に適した環境は、自分で作れば良い」そう話してくれたのは、地球規模で実践・探求の機会を提供する『タイガーモブ株式会社』のCEOを務めながら、2児の母の顔も持つ関西学院大学総合政策部の先輩、菊地恵理子さん。

菊地さんいわく、起業をするきっかけとなったのは、学生時代、今まで築き上げてきた常識が壊されてグローバルな視点を持てたからだそう。

そんな菊地さんが総合政策学部で学んだのは、当たり前は当たり前ではないということ。

子育てをしながら日々楽しく、やりがいをもって仕事をしている菊地さんに「自分に適した環境を作るコツ」について教えていただきました。

【菊地 恵理子】
関学総政卒。在学中は中国留学、インターン、バックパッカーを経験。2016年に「次世代リーダーの創出」をミッションに掲げ、タイガーモブを立ち上げる。二児の母で、大自然の中でリモート&子育てしながら地球規模での実践・探求の機会を提供。2017年全国商工会議所女性会連合会主催女性起業家大賞スタートアップ部門特別賞受賞。

インタビュー動画はコチラ

人生のターニングポイントを提供する事業を立ち上げ、やりがいをもって働く菊池さん

菊地さんは、5年前に自分で会社を立ち上げたんですよね。

菊池さん

はい。タイガーモブ株式会社という会社です。今もそのCEOを務めています。

CEO
最高経営責任者。企業マネジメント組織上での呼称。経営上の意思決定において最高の責任をもつ。

どんなことをしている会社なのでしょうか?

菊池さん

ざっくり言うと、教育系の会社ですね。『次世代リーダーの創出』をミッションにしています。
そのために、小さな1歩から、大きな挑戦まで、地球規模で自分らしさというものを追求してもらいたいんです。

それを続けることで、『自分はこれだ!』と思える分野が見つかり、それで旗を立てる人を増やしているような事業を展開しています。

なるほど~、すごく素敵なことですね。具体的にはどんな活動をしているのでしょうか?

菊池さん

主に海外インターンシップの事業を展開しています。世界45カ国、350件以上の海外探求だったり、海外実践機会を提供しているんです。例えば、シンガポールやケニア、ウガンダ、インドなど、、、。

色々な国に行って、現地のスタートアップ企業やベンチャー企業に行っていただいて、実践活動をしていただくプログラムを展開しているんです。

めちゃめちゃ楽しそうなプログラムですね!僕がもし学生だったら、参加していたと思います!
ただ、コロナが広がってからは海外渡航はとても難しくなりましたよね、、、。どうされたのでしょうか?

菊池さん

そうなんですよ。私たちは、ピンチはチャンスだ!ということで、思い切って全てオンラインのプログラムに変革していきました。

世界の社会課題に自宅から挑戦、そして解決できるような、オンライン海外インターンシップや、世界中の起業家や実践者から話を聞ける探求学習の機会をつくりました。

自宅から世界と繋がれるのは、素晴らしいですね!

菊池さん

そうですよね!他にも、教育機関向けに学校のカリキュラムを一年間導入させていただいくこともありました。例えば、関西学院大学総合政策学部では、学部独自の単位認定プログラムとしてオンライン海外インターンシップを実践いただいたんです。

その他、企業さん向けに企業研修で海外研修だったり、探究学習の機会を提供していますね。

本当にいろいろなことをされているのですね!どの活動も、『実践を通した学ぶ機会の提供』という面で共通しているように思えます。

菊池さん

鋭いですね(笑)私たちはすべて、『learning by doing』というのを起点にやっているんです。先駆者から学んで、自分も実際に実践してみて経験から学ぶ経験学習サイクルを基に事業を作っています。

まさに、自分らしさを磨いて旗を立てる人を増やすような取り組みですね。とてもやりがいが感じやすいのではないでしょうか?

菊池さん

そうですね。人生のターニングポイントとなる機会をたくさん提供しているので、その人の『人生が変わる瞬間』や、『やる気スイッチが入った瞬間』に立ち会えることはすごい嬉しいです。

日常生活の中で、そのような瞬間に立ち会えることはなかなかありませんよね。

菊池さん

そうですね、だからこそとっても貴重な体験だと思います。あと、私の根本のやりたいこととして、『お祭り状態にしたい』という強い思いがあるんです。

お祭り状態、、、?一体どんな状態なのでしょうか?

菊池さん

単なるお祭り騒ぎじゃないですよ(笑)

『お祭り』って、なんだかその言葉を聞くだけで高揚感がありませんか?そこに行ってみれば、知っている人も知らない人もいて、色々喋っていると一緒に行ってみよう、やってみよう、っていうシナジーが自然と沸き起こりますよね。これが、まさにお祭り状態です。そのお祭り状態を、世界中のあらゆる組織や人とコラボレーションさせて実現させていっています。

『一体感を持ってつながりを作っていく』というプロセスに関わる仕事、とも言えますね。これが本当に大好きで、とっても楽しいです。

まさに、その人が一歩踏み出すきっかけとなる、人生の大きな変化のお手伝いをしていると言えますね!さすがです!菊地さんのような、『人生のターニングポイントを提供できる人』になりたい人はたくさんいると思います。

しかし、誰かの人生を変えることは本当に難しいですよね。誰かの”人生”に関わる上で、どんなことが必要なのでしょうか?

菊池さん

すごい先の未来、例えば100年、200年、1万年先を見据えた上で、真摯に目の前の人の人生と向き合うことですね。

誰かの人生に関わるときは、目の前の人の短期的な喜びだけを提供するのではなく、その人や地球の100年後の未来までを考えること。これが何より大切だと考えています。

その人らしさのキャラクターに対して、真摯に向き合えるというのがとても大切なんですね。

菊池さん

そうですね。あと、そもそも働く上で、忘れてしまいがちな大前提があります。

『自分のミッションと会社のミッションが結びついているのか』どうかです。いくら会社がいいこと言っていても、自分のやりたいこととかけ離れていたらやる気が起こらないし、やってて楽しくないですからね。

スキルや知識よりも、まずは考え方があっているかとか、そこに情熱があるかとかのほうが重要なのですね。

菊池さん

自分の理想の環境は、自分で作り出す

菊地さんは、ご自身が立ち上げた『タイガーモブ株式会社』でCEOを務めていらっしゃいますよね。それを務める上で心がけていることはありますか?

菊池さん

CEOの役割って、2つあるんです。

1つは、『未来を見ること』です。自分はこうゆう未来を実現したいんだ、ということを発言・発信していくんです。そして、どんどん仲間を増やしていきます。

もう1つは、『カオスにしていくこと』です。会社って、大きくなればどんどんちゃんとした組織になっていくと思うんですよ。それをぶち壊して、変化・進化していくことが重要です。私は常にこの2つを意識しています。

とてもおもしろい視点!(笑)チームの方向性を示していくような立場とも言えますね。
そもそも、海外インターンシップに目をつけられたきっかけはなんですか?

菊池さん

もともと大学時代、一年間休学したんです。半年間は中国へ留学に行って、もう半年間はインターンシップとバックパッカーをしていました。もう10年くらい前の話になりますね。

菊池さん

そのときには、アジアだと30~50万円、アメリカや先進国だと100万円かかるのが、海外インターンシップだったんです。

そんなに高額だったんですか!

菊池さん

そうなんですよ。しかも行ってみると、旅行系やベビーシッター系しかなかった。とっても選択肢が限られていたんです。私の場合、もともとホスピタリティに関わる仕事をしたかったので、幸運なことに適した環境が見つかりました。

でも、いろいろな人がいて、いろいろなニーズが有る中で、私のようにたまたま適した環境を海外インターンシップで見つけられる人っていないだろうなと思ったんです。そして何より、値段が高い。これだと限られた人しか行けないですよね。

だから、できるだけ値段を下げて、できるだけ選択肢を多くしよう。そして、行った先には、大変だけどできるだけ挑戦できるようにしよう、挑戦しがいのあるようにしよう。そんな思いで立ち上げました。

具体的なビジョンや強い想いを持って起業されたんですね!

菊池さん

そうですね。起業をする一番の魅力は、『成し遂げたい未来像を自分たちで作れること』だと私は思います。

どこかの会社に入ってみると、会社の未来像は既に決められていますよね。

菊池さん

そうなんです。だから、自分たちのやりたいことを100%叶えるのは難しい。

一方、自分の作った会社だと、自分たちで舵をきることができます。自分たちのつくりたい未来を作ることができます。自分のやりたいことに対して、いろいろな方を巻き込んで、仲間の力を借りながらどんどんパワーアップしていく。この過程が、本当に楽しいです。

なるほど!やりたいことに対して最短アプローチができるんですね!

菊池さん

おっしゃるとおりです。あと、実は私、結婚して子供が2人いるんです。

えええ!子育てをしながら会社を経営してる、ということでしょうか、、、!

菊池さん

そうなんです。子育てと経営を両立できている今の環境は、すごいありがたいです。

どのように両立されているのでしょうか?

菊池さん

コロナでリモートワークが広がりましたよね。そこで私達の会社も、2020年の7月からオフィスを撤去してフルリモートにしてたんです。そうすることで、それぞれが好きな場所で好きな人と好きなことをしながら働けるというのを実現することができました。

私の場合、今は北海道の弟子屈という国立公園の中の大自然に住んでいるんですよ。今日も、たぬきや鹿、リス、きつねが現れました(笑)いろいろな動物たちに囲まれながら生きているんですけど、そのような環境でも、仕事をしながら子育てもしながら働けちゃうっていうのが、自分の会社ならではなのかなと思っています。他のメンバーは栃木や北海道(帯広)、東京、埼玉、名古屋、南アフリカと、それぞれが適した場所で暮らしています。

働き方を含めて、自分のしたいことを決めて作っていけるのが、起業をする魅力なんですね。

菊池さん

はい。『見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい』というガンジーの言葉あるんですけど、本当にそのとおりで、自分が作っていけたらなあと思います。

しかし、何かをする上で楽しい事ばかりではないはずです。
起業をする上で、大変だったことや苦労したことをお聞きしたいです。

菊池さん

うーーん。私は基本的に、そんな大変なことがなかった人ですね。(笑)

大変なことがなかったんですか、、、!?信じられないです。

菊池さん

きっと、はたから見ると私は大変そうなんだと思います。だけど、それは自分たちがしたいことのための『やるべき道』なので、私はすごい楽しいんです。怒られることも、失敗することも、大変だなんて思いません。

めちゃめちゃかっこいいですね!
しかし、実際にどんなふうに行動すればよいのか分からない人が多いと思うのですが、、、。

菊池さん

やるしかない状況に自分を持っていくこと。これに限りますね。そもそもやってみないと何が分からないのかすら分からないです。どれだけ調べていても、やればやるほど分からないことなんて山ほど出てきます。

だから、とりあえずやってみるのが大切です。それに、最初は右も左もわからなくても、みんなが助けてくれますからね。

たしかに、悩んでいるだけでは何も解決しないですよね。

菊池さん

強いて言うなら1つ、苦労したことはありましたね。最初、『起業するためは、メンバーを3人集めろ』と言われたんです。

桃太郎に例えたらめちゃめちゃ分かりやすいんですが、、、。1人目は、夢を語る桃太郎。これはは起業家の私ですね。2人目は、忠実に色々と実行してくれるような犬となる実務家。そして3人目は、管理や計画をしてくれるサルとなる管理者。『この3人が集まれば、お前は起業家の才能がある』と言われました。

桃太郎理論、めちゃめちゃおもしろいですね(笑)。僕も色々と活動をしていますが、とても納得です。

たくさん行動し、たくさん自分の常識を壊してほしい

総合政策部での学びは今どんなふうに役立っていますか?

菊池さん

一番は、自分の中の『当たり前』や『常識』が変わったことですね。

EC(=英語コミュニケーション)の授業で、ほとんどの人が英語を話すことができたんですよ。どうしてかというと、彼らのほとんどが高校時代に留学をしていたり、休みの期間は海外に行くのが当たり前だと思っていたんです。私は全くそうゆう経験をしていなかったので、ECの授業でそれを見て本当にびっくりしました。

たしかに、『次はどこの国へ行くのー?』みたいな会話が当たり前にされていますよね!
休み期間になると、どこか海外へ行くのが当たり前、旅行するだけではなくてボランティアもするのが当たり前。関西学院大学の総合政策部には、そんな考えの人がたくさん集まっていますね。

菊池さん

うんうん。私はそれに影響されて、海外に目を向けることが当たり前になったんです。

そして、その意識のもとで行動することと、自然と2歩目3歩目が変わっていきますよね。行動するマインドの基盤をもらえたのが、行ってよかったなあと思うことですね。

『Think globally, Act locally.』という総合政策学部の掲げる言葉がありますよね。まさにそれを菊地さんは実践されていたんですね!

菊池さん

はい。それを実際に自分の学生生活で学べたことが、私の人生においてとても大きな影響でしたね。ガンジーの言葉で、『人間は思考の産物にすぎない、人は思っているようになる』というものはご存知ですか?

聞いたことあります!

菊池さん

私はこの言葉を常に念頭に置いているんです。思考の幅を広げれば広げるほど行動範囲が広がり、人生はより豊かになるということを、とても端的に表されていますよね。

実際、菊地さんも大学時代に、中国に留学したりインターンへ行ったり、バックパッカーをしたりと、色々な行動をされていますよね!

菊池さん

そうですね!それらの経験を通して、自分の当たり前は当たり前ではないということに気付かされました。今までの私の『常識』が壊されて、また作られて、っていうのを何度も何度も経験したんです。

そしてそこから、『自分のアイデンティってなんだろう。』とか、『どうして自分はこんなことをやってきたのだろう。』とか、『なんで自分はこんなふうに考えるのだろう。』っていうのを、すごい考えさせられました。それがその人らしさを、私自身、私らしさをどんどん認識できるようになっていくのだと思います。

今思い返すと、それらの経験が基になって、今の会社・事業につながっていますね。

最後に、今の学生に伝えたいことがあれば教えて下さい。

菊池さん

とにかく、原体験をたくさん作って欲しいなと思います。

どんな人でも、自分が成し遂げたいことや興味・関心は何かしらありますよね。それを少しでも多く、一歩でも多く行動してもらいたいです。自分が本当にこれが好きなのか、やってみたいのかとか、それを試してみてほしい。

菊池さん

関西学院大学の掲げる言葉に、『世界市民』というものがありますよね。

100年先、1万年先からみたときに、『今の自分の行動がどうゆうふうに自分につながるんだろう』とか、『どこまで自分は繋げていきたいんだろう』とか、『どれくらい大きくしたいんだろう』とかを考えながら行動してもらえたらなあと思います。必ず、それが糧になりますからね。

めちゃめちゃ素敵ですね!勉強になることばかりです。今日は本当にありがとうございました!

関西学院大学の大先輩である、菊池恵理子さん。

人生のターニングポイントとなる機会の提供をし、社会に貢献し続けることができるのは、たくさんの行動を通してたくさんの”当たり前”を壊してきたから。

高校生のみなさんは、「将来どんなふうに働こうかな」と不安になっていませんか?

将来、65%の学生が今は存在しない職業につくと言われている現在。

自分の中の常識にとらわれず、たくさん行動することで、きっとその不安は晴れるはず。

今は無理しなくても大丈夫。いずれ心地のよい自分に適した環境が見つかりますよ。

<取材=諸富稜(スタジオMOVEDOOR代表)