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  • インタビュー記事

大学院卒業後、JICA職員に。宮本麟太郎さんが語る「世界が広がる」大学生活の過ごし方とは?

2021年11月25日

「何のために学び、働くのだろう?」と疑問に思うことはありませんか。

「大学は専門分野を学べる場所であるだけでなく、幅広い学問と人々に出会える場所でもあります」そう話してくれたのは、学生時代に都市の分野を専門的に学び、現在はJICA職員として活躍する関西学院大学総合政策学部の先輩、宮本麟太郎さん。

宮本さんは、学生時代に学んだ都市分野を専門に今後も世界のために活躍したいと思っている。

そんな宮本さんが総合政策学部で学んだのは、今の仕事に必要不可欠な、ある両側面の力。

自ら行動して様々な経験を積み重ね、現在はJICA職員として世界の課題に向き合い続ける宮本さんに「世界が広がる大学生活の過ごし方」について教えていただきました。

【宮本麟太郎】
総合政策学部都市政策学科2019年卒業の宮本麟太郎です。卒業後、大学院にて都市計画を専門に学び、2021年より独立行政法人国際協力機構(JICA)に勤務しています。社会基盤部都市・地域開発グループに所属し、アフリカ、南米、アジア各国の都市計画や国土計画の案件立ち上げや、マネジメントを行なっています。

インタビュー動画はコチラ

学生時代の学びを発展途上地域のために

本日はよろしくお願いします。

宮本さん

よろしくお願いします。

自己紹介していただいてもいいですか。

宮本さん

総合政策学部の都市政策学科を2019年に卒業しました、宮本麟太郎と申します。卒業後は大学院に進学して、現在は独立行政法人国際協力機構(JICA)で働いています。

独立行政法人とは
業務の質や効率性の向上などを目的に、国から独立して公的な事務および事業を実施する法人のこと。

どのような会社で働いているか、もう少し詳しくお聞きかせください。

宮本さん

JICAは国際協力分野を担う独立行政法人でございます。現在は日本の政府開発援助(ODA)の税金を使い、全世界150の国と地域を支援しています。

政府開発援助(ODA)とは
開発途上地域の開発を主な目的として、政府や政府関係機関による国際協力活動に使われる資金のこと。

具体的にどのようなサポートをされるのですか。

宮本さん

資金、人、もの、そして技術の点で色々なサポートをしています。世界150の国や地域を対象にして、たとえば橋を造りたいけれどお金がないという国であれば、資金面でサポートします。橋は出来たけれど、保守点検の方法が分からないという人や政府に対しては、人材協力の面で専門家を日本から派遣したり、相手国に技術を教えたりしています。また、教育分野では無償で学校の建設や教材の提供をするなど、幅広いセクターで仕事をしているのが特徴です。都市開発や教育以外にも、最近いろいろな国で紛争が起きていますので、平和構築の分野、さらにはコロナの影響もあり保健医療の分野にも、かなり力を入れています。

とてもスケールが大きく、かつ幅広いお仕事をされているのですね!

宮本さん

そうですね。JICAでは、そこで働く人を『国づくりのプロフェッショナル』という言葉で表していて…。JICA職員は、相手国がより発展していくために、どうやって国を作ったらいいかということを相手国に伝える、もしくは一緒に考えて作っていくことを専門にしています。

その中で宮本さんは具体的にどのような仕事を担当されていますか。

宮本さん

私は、社会基盤部の都市地域開発グループに所属しています。具体的な仕事内容を言いますと、途上国の都市開発、国道開発、もしくは地図の製作などをやっています。今、Zoomの背景にしているタイのバンコクを例に挙げますと…。

宮本さん

この都市は発展著しいのですが、一方で交通の課題や、無秩序に都市が広がっていくという課題があります。それについて『それなら私たちがここにスマートシティを置いたらいいんじゃないか』とか『ここに開発する新たな駅を総合的にマネジメントすれば、渋滞が軽減してより通勤しやすい都市、または好きな場所に移動できる都市になるのではないか』というふうに考える仕事をしています。

さらに具体的に話すと、私はタイの『地理空間情報』と言って、日本で言うところの国土地理院の創設もしくはデータで国の位置を正確に測る組織を作っています。今後、自動運転の発展が予想されますが、この組織のデータによって自動運転が可能になるかもしれないのです。

またブラジルでは、都市計画を作っている相手国の方々と一緒に、今後のスマートシティについて考えています。ブラジルも日本のように高齢社会に入っていく中で、高齢化が進む都市の街づくりや、よりスマートな高齢者街づくりを一緒に考えていくという協力をしています。

一概に都市と言っても、各都市が抱える個別の課題に向き合っていらっしゃるのですね。では、お仕事をしていて楽しい時や、やりがいを感じる時はありますか。

宮本さん

辛いことも多いですが、やはり自信を持って世界のために仕事ができるところが楽しいなと思います。また、相手国もしくは相手都市の数年後のビジョンを自分で描いて、若いうちから相手国の政府にどんどん提案できることが楽しいことだと考えています。

自分たちの提案がその街の未来に反映されるのであれば、とてもやりがいがありそうですね!

宮本さん

そうですね。もちろん自分が計画を作るわけではなく、色々な専門家を相手国に送る方法や送る人数を考えたり、逆に相手政府にいつのタイミングで日本のどの技術を見に来てもらえれば、相手国の都市開発能力が高まるだろうということを考えたりします。そういう点も非常に楽しい仕事かなと思っていますね。

なるほど。すべて自分たちで解決するのではなく、専門家のキャスティングや適切なチーム編成も考えられているのですか。

宮本さん

そうですね。一人一人が専門性を持っていますが、私たちの仕事は調整をする、いわゆるジェネラリストに近い仕事です。具体的には、相手国の発展が最もポテンシャル高く発揮されるように資金の活用方法などを考え、調整していく仕事だと思っています。

色々な専門家のお力をお借りして一つの目的を達成するところに、総合政策学部の特徴を感じられますね。これ以降の質問が楽しみです!
世界規模で仕事をしたい学生も多くいると思われますが、国際協力の分野、あるいは世界で働くにはどのような準備やスキル、経験、知識が必要でしょうか。

宮本さん

国際協力の分野は専門的に物事を解決する人たちもいれば、JICA職員のように物事を調整するジェネラリストとして活躍する人たちもいるので、様々な選択肢の中から、この分野に入っていくことはできます。一方で、今後働く中でジェネラリストの人たちも、より専門性が求められる業界になってきています。例えば、国際協力業界の最も大きな国際機関である国連では、ほとんどの人たちが修士以上、半分くらいの人たちは博士を持っているような状況です。JICAでも修士もしくは博士課程を卒業した人たちが多くなっているので、専門性は求められていることの一つかなと思います。

修士とは
大学院の修士課程を修めた人に授与される学位のことで、基本的には学部卒業後に2年間の大学院修士課程へ進む。

博士とは
大学院の博士課程を修める、または博士論文が認められた人に授与される学位のことで、修士よりも上の学位。

特にJICAでは専門性を持ちつつも、やはりジェネラリストとして、いろいろな専門家をまとめる、あるいは調整する能力が求められるということでしょうか。

宮本さん

そうですね。JICAもそうですし、他の組織も調整力が非常に必要です。相手国と言っても、相手国の様々な組織、省庁や現地住民の方を巻き込んでやらないといけません。それは日本でも同じことで。JICAだけで出来ることではなくて、日本政府や省庁、行政、民間企業の力など、 色々な力をまとめ上げることが求められます。このようなジェネラリスト的な力は、まさに総合政策学部では皆さんが持っておられますし、この学部で学べることが実際に生かされる力ではないかなと思います。

関西学院大学総合政策学部は多様性と専門性が共存する場所

総合政策学部での学びは今どのように活きていますか。

宮本さん

一点目は先ほど少し述べたように、やはり調整力ですね。総合政策学部は幅広い分野を学べる、そして色々な人たちが集まっている学部です。そのため、自分が学んだ幅広い分野の中から彼らのそれぞれ異なる考え方を察する、もしくは彼らの意見を取りまとめることは、総合政策学部で学び、今に活きている力かなと思っています。

二点目は学んだことを掛け合わせることです。私は現在、国際協力業界の中でも都市分野を専門にしており、今後もこの分野で活躍したいと思っています。この想いは総合政策学部での学びと合致します。具体的に言いますと、総合政策学部は国際的な要素を非常に多く学べることに加えて、私の場合は都市政策学科に入り、都市分野の専門性も学びました。そして総合政策学部で学んだ幅広い分野から一つではなく、国際と都市の二つを掛け合わして、仕事に活かすことができていると思います。

先ほどお話しされた宮本さんの働き方につながる部分がありますね。それでは、学生生活で最も力を入れたことを教えてください。

宮本さん

学生生活では研究に力を入れました。私は開発途上国の都市の現状、特に交通と都市開発の関係性に興味を持ち、研究していたのですが、学んでいく中で都市を専門とする教授や国際の知識を持っている教授に色々な話を聞けたことが非常に役立ちましたね。

また、総合政策学部は机上の勉強だけではなく、『実際にフィールドに行って、色々なものを見てこい』精神がかなり強いと思います。そのため、実際に現地に行き、学んできたこともあります。

幅広く学びつつも、フィールドワークを通して一つの専門性を深められるという、非常にバランスのよい勉強が出来るのですね。

最後に、今の学生に伝えたいことがあれば教えてください。

宮本さん

二点挙げさせてもらいます。一点目は、いろいろな学生に今のうちから会っておくことです。総合政策学部は本当に幅広い分野に興味を持った学生がいるので、それぞれの興味分野をしっかり聞いて、彼らとどうやったらコラボレーションできるか、面白いことができるか、もしくは彼らの知識をどうやったら自分に取り込めるか…。このようなことを考えられる部分に面白さを感じる学部だと思っています。さらに、総合政策学部以外にも様々な学生がいます。ぜひ総合政策学部がある神戸三田キャンパスを飛び出して、西宮上ヶ原キャンパスの学生に会いに行くというチャレンジをしてみてください。

二点目は、総合政策学部は教授との距離が非常に近い学部だと思います。気さくに話してくれる、相談に乗ってくれる教授が沢山いますので、ぜひ積極的に話に行ってもらえたらと思います。

総合政策学部の魅力をたくさん教えてくださり、ありがとうございました!

宮本さん

ありがとうございました。

宮本麟太郎さん、ありがとうございました!

関西学院大学総合政策学部の先輩である、宮本麟太郎さん。

JICA職員として、世界のためにジェネラリストとスペシャリストの両側面で活躍できているのは、多様性と専門性が共存する大学で自ら行動し、経験と学びを重ねていったから。

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<取材=諸富稜(スタジオMOVEDOOR代表)>