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  • インタビュー記事

JR社員から外資系スポーツアウトドア企業で人事担当に。池田寛通さんが語る大学時代にしかできない時間の使い方とは?

2021年11月18日

大学は専門分野を深く学び、究める場所だと思っていませんか?

もちろんそれも正解ですが、「知識は社会人になってから幾らでもつけられます」

そう話してくれたのは、アウトドア業界の外資企業であるKEENで人事として働く、関西学院大学総合政策学部の先輩、池田寛通さん。

池田さんいわく、スポーツアウトドアには元々興味があったものの、外資や人事に関心を持ったのは社会人になってからだそう。

そんな池田さんが総合政策学部で学んだのは、全体を俯瞰してみる力と異なる背景の人々と互いに認め合う力。それらは池田さんの生きるヒントとなり、今に活きています。

人事として、社員ひとりひとりと向き合うことを何よりも大切にする池田さんに「大学時代にしかできない時間の使い方」について教えていただきました。

【池田寛通】
キーン・ジャパン合同会社 People & Culture Manager、2004年卒業。JR西日本→アシックス→アンハイザーブッシュインベブ→キーン・ジャパン こんにちは!卒業して、16年。とうとう40歳になり、介護保険料の支払いが始まり、白髪は頭だけでなく髭にも見られるようになり、スポーツをすれば怪我がちな外資のサラリーマンです。でも気持ちは若いまま!総政時代の友人たちと杯を交わすときほどリラックスして楽しい時間はないな、と毎回会うたびに感じています。

インタビュー動画はコチラ

働きたかった業界で社員の成長をサポートするプロフェッショナルに

写真右上が池田さん。

池田さんはどんな会社、業界で働いていますか?

池田さん

キーンというアウトドアシューズを製造・販売している会社で働いています。

スポーツアウトドア業界で、本社はアメリカのポートランドにあります。

アメリカの会社なんですね!日本ではどのくらいの会社規模でしょうか?

池田さん

国内の会社で働いている人は大体140名で、12店舗を展開しています。

どんなスポーツグッズ、アウトドアグッズを販売されているのですか?

池田さん

アウトドアサンダルですね。夏場に水辺で活躍したり、キャンプシーンで使われたりするサンダルが主力商品です。

アウトドアサンダルというジャンルは初耳です!池田さんはそのサンダルを開発されているということでしょうか?

池田さん

いえいえ、私の役職はpeople and culture managerという横文字なんですが、いわゆる一般企業であれば人事総務部のマネージャーになります。

人の採用や、人と組織の開発、給与とか社会保険、それから働く環境整備、健康推進、社員のカウンセリング……。こういったバックオフィス系の仕事ですね。

さきほど申し上げた通り、そんなに大きい組織でもないので、社長をはじめ、各部のリーダーや社員と一緒に組織を作り上げています。

では、なぜスポーツアウトドアないしは海外をメインとした会社に就職されたのでしょうか?

池田さん

最初はJRで働きはじめたんですが、もともと好きだったスポーツアウトドアに関わりたいなと思って、日本企業のアシックスに入社したんです。

そのときに仕事で海外に行く機会があって、そこで外資って面白そうだなって思いました。

JR時代の池田さん(写真右)
アシックス時代に多様な国籍の方々とともに記念撮影。

外資の面白いところを池田さん目線で教えていただけますか?

池田さん

日本企業にはない決断の速さと実行力ですね。それから、チャレンジするカルチャーがあるところも面白いと思います。

日本とは働き方が違うんですね!

池田さん

そうですね!働く環境も魅力かもしれません。今日は休日ではないんですが、カジュアルな服装で勤務できるとか……

外資の魅力がどんどん出てきますね!

池田さん

あとは日本だと、その会社にいることが目的になりますが、海外の会社であれば、なぜ働くのか、何をしたいのかがきちんと目的としてあるように感じますね。

外資企業に憧れはあるけど、語学の面などからハードルが高いと感じている学生もいると思います。外資企業で働く場合、どんな人が向いているのでしょうか?

池田さん

オーナーシップがある人ですね。オーナーシップとは受動的でないこと。自ら進んで物事に取り組む心構えがある人が向いていると思います。

もちろん英語は要素になってきますが、あくまでツールなので、より大切なのはオーナーシップを持てるかどうかです。

オーナーシップを発揮するというのは具体的にどういった行為になるのでしょうか?

池田さん

仕事は、与えられる仕事と自分から取りに行く仕事の二つに大きく分かれるのですが、後者がオーナーシップだと思います。

もちろん責任を取るという意味ではありません。どんな階層のなかでも受動的にならずに、前向きに仕事に取り組むという行為がオーナーシップだと思います。

キーンのもう一つの特徴であるアウトドア業界で働くために必要な知識・経験はありますか?

池田さん

どの業界で働くにも共通の回答になってしまいますが、その業界で働きたいという気持ちが一番大事かなと思います。

その分野で働きたいという熱意があれば、何かしら入り口が必ずあると思うので、そのチャンスを見逃さずにゲットしていくのが大切かなと思います。

池田さんはアウトドア業界や外資で働きたいという熱意があって、働くチャンスをしっかり獲得されたんですね!
では、そもそも数ある役職の中でなぜ人事を選ばれたのでしょうか?

池田さん

人事をやり始めたのは、めぐりあわせでしかなくて。アシックスに入ったときに人事をやり始めて、そのなかで、自分は人事の適性があるなって思ったんです。

人事はビジネスを裏からサポートする縁の下の力持ち的な部門。縁の下の力持ちは、一つの知識やスキルがあればできるものではありません。ビジネスへの理解など、いろんな知識がミックスされてできるものなんです。

かつ商品って結局は人によって作られているので、その人が成長することをサポートできる。ここに喜びを感じたので、人事で働いています。

ちょっと話脱線しますけれども、日本では人事を分野として学べる大学がなかなかないんです。

言われてみれば、そうですね。考えたこともありませんでした……!

池田さん

これは欧米と全然違うところです。逆にいうと社会人になってから日本の人事部門で働き始めると、そこでプロフェッショナルになれるんですね。

人事をやっているなかで、それに気づいてからは『あ!ここでプロフェッショナルになったら面白いじゃん!』と思って、さらに興味関心が深くなりましたね。

プロフェッショナルになれるという発想の転換がすごいです!そんな人事の仕事をしていて、楽しいなって感じる時はありますか?

池田さん

人が成長しているのを見る時ですね。

たとえば社員は能力やスキルを向上させていって、キャリアを構築していくのですが、そうしたキャリア構築のサポートをするのはすごく楽しいです。前向きに働こうとしている社員のサポートをするときは特に楽しさを感じます。

楽しい時があると逆に苦しい時とか面白くない時もあると思いますが、仕事なので面白くないことは多々あります。でも、そのなかでも、あんまりそういうことに時間を使いたくはなくて。だからモチベーションの低い社員や人と一緒に働くのはすごくストレスを感じますね。

やはりモチベーションの高さは周りに影響を与えるんですね。
社員が前向きに働いていくために、池田さんが心がけていることはあるのでしょうか?

池田さん

否定しない、勇気づける。これに尽きるかなって思います。

あまり指示せず、それぞれの社員が持っているモチベーションの源泉に自分で気づいてもらうことですかね。

それは池田さんがしっかり一人一人と向き合うことで勇気づけをしていくのか、 あるいはそういったカルチャーを作っていくことに注力されているのか、どちらのイメージでしょうか?

池田さん

どちらもです。なぜ私が社員数140人くらいの会社で働いているかというと社員一人一人の顔が見られる、話ができるから。これはすごく大切にしているところです。

大きい会社になればなるほど、社員の顔と名前が一致しないことがよくありますし、その人が考えていることや歩みたいキャリアが見えなくなるんです。

社員一人一人と向き合うのがキーンでの私の喜びでもあり、社員がモチベーションの源泉に気づくために必要なこと。だからこそ私は社員一人一人と向き合います。

ただ、向き合うことに全ての時間を費やすわけにはいかないので、社員みんなで相互に補完しあって、フレンドリーな柔らかい雰囲気を作っています。

お話が上手すぎて、とても勉強になります!

池田さん

いやいや、話せないと人事は出来ませんよ!

関西学院大学総合政策学部は「幅広い学問分野と価値観」に触れられる場所

池田さんにとって総合政策学部での学びは、今どのように活きていますか?

池田さん

全体を俯瞰してみるというのは今に活きています。

総政は学問を通じて全体を俯瞰してみる、つまり幅広い分野を学べることが大きな特徴だと思います。その中で自分の興味関心や得意不得意を知れたことが総政での学びかなと思っていて。

知識というのは長い社会人生活のなかで学び続けていれば勝手に増えていきます。総政はそんな学びの入り口を探せる、すごくいい学部だなと思いますね。

学生生活で一番学んだこと、良かったなと思う経験があれば教えていただけますか?

池田さん

友人が大事ということです。大学に入ると違う考えを持った人が周りに沢山いると思います。

いろんなバックグラウンドを持った人が集まって話し合うことで、その違いを深く知って、互いに認め合う。これは大学時代、総政でしか経験できないことだったと思いますし、一番学んだことですね。

最後に、今の学生に伝えたいことがあれば教えてください。

池田さん

コロナ禍のいま、これまで普通といわれていた学生生活を送れていないはず。

でも、その中でも、友人たちと会って、ともに語って、無駄な時間を過ごして、計画性のない旅をしてほしいです。僕は総政時代、授業終わりに勢いで城崎温泉に行ったりしましたね。

計画するとか決まったことをやるのは社会人になってもできるけど、何も決めないっていうのは学生にしかできないことだと思います。

ぜひ気の合う仲間と過ごす無駄な時間を楽しんでください。

学生時代の大切な友人たちとの一枚。
池田寛通さん、ありがとうございました!

関西学院大学総合政策学部の大先輩である、池田さん。

今、自分の適性に合う会社、役職で働くことができているのは、学生時代に幅広い学びと経験を重ねて、自分を知る機会があったから。

高校生のみなさんは、将来の人生プランを立てていますか?

多くの人はまだ計画していないかもしれませんが、今はそれで大丈夫。

大学で幅広い分野を学び、さまざまな背景を持つ人々と交流していくなかで今まで気づかなかった自分を知る。そして、友人たちと計画性のない時を共にする。

大学生だからできる、こんな贅沢な時間の使い方が、みなさんを支えて、なりたい自分像のヒントを与えてくれるはずだから。

<取材=諸富稜( 22期生 )>