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  • インタビュー記事

総合政策学部で学べた、エネルギー業界で必要な「物事を複眼的に捉える力」とは?

2021年10月31日

みなさんは大学という場所に対してどのようなイメージを持っていますか?

「大学時代の経験を通して、スキルを磨くだけでなく自分に足りないところにも気づくことができた」と話してくださったのは、大阪ガス株式会社の福谷能男さん。

幅広い事象が関係するエネルギー業界では、総合政策学部で身につけた力が大いに活かされているそうです。そんな福谷さんに、関西学院大学総合政策学部での学びや、現在のお仕事との繋がりについて教えてもらいました。

インタビュー動画はコチラ

裏方として海外と連携しながら、安定した都市ガスを供給するために

福谷さんは現在どのようなお仕事をされているんでしょうか?

福谷さん

大阪ガス株式会社の資源・海外事業部という部署で、権益を保有している海外のガス田の運営管理をしています。主に私はその運営管理における日本側のサポートを担当しています。

資源・海外事業部とはどのような部署になるんでしょうか?

福谷さん

大阪ガスでは、都市ガスの原料となるLNG(液化天然ガス)を海外から購入し、都市ガスとしてお客様に提供しているのですが、資源・海外事業部ではLNGそのものを生産する事業にも参画しており、グループ全体の収益の拡大に加えて、海外から輸入するLNGを安く安定して供給できるように活動しています。

海外との具体的な交渉や管理は海外拠点で行っているのですが、グループとしての意思決定や予算の管理などは日本側が担っており、海外拠点と連携して事業を進めています。

資源を獲得するところから供給するところまで、非常に幅広い領域を担っている会社なんですね…!

福谷さん

そうですね。バリューチェーンが本当に広いと言われています。

大阪ガス本社ビル

お仕事をしていてやりがいを感じることを教えていただきたいです。

福谷さん

我々は日本側で後方支援をする役割ですので、自分たちが現場で直接交渉するわけではないんですが、だからといって指示待ちだと素早くビジネスチャンスに対応できなくなってしまうので、常に起こりうることを想定して先手を打つようにしています。そしてその想定や準備が上手くいくときに大きな喜びを感じています。

また我々はいわゆる裏方でもあるんですが、現場の方から我々のサポートに対してありがとうという言葉をもらうたび、仕事へのやりがいを感じています。

素敵です…。ちなみに、大阪ガス株式会社の魅力も教えていただいてもいいですか?

福谷さん

自由闊達な社風ですかね。議論が好きな人が多い会社かなとも思います。風通しが良く、会議では誰もが意見を求められます。また、誰でも関係なく意見を発信することで、若手のアイデアが事業として形になることも珍しくありません。

よくボトムアップの会社とも言われているんですが、上司の指示に従うだけでなく、若いときから一人一人が意志を持って働いていると思います。他のエネルギー関連の会社さんと比較しても、その自由さや闊達さは突出しているんじゃないかなと思っています。

エネルギー業界で必要な「幅広く複眼的に捉える力

生活のインフラを担うガスの業界で働くために、もし必要な経験やスキルなどがあれば教えていただきたいです。

福谷さん

バリューチェーンが非常に広い業界ですので、もしご興味のある方は常に色んなことにアンテナを張っていただくことが大切かなと思います。また幅広いということは受け皿も広いということなので、その中で自分の得意なことを活かせる分野が必ずあるはずです。

例えば地理が好きな方は、海外でのビジネスで非常に力を発揮できると思います。日本のエネルギー供給のほとんどは海外からの輸入に頼ってしまっているので、いかに近い場所から安定して輸入するかという視点が大切になってくるのですが、その際に地理のセンスが活かせるのではないかと思います。

またある国で起こった戦争や政治家の発言などがエネルギーのマーケットを大きく左右するんですが、そうした国際関係や地政学の知識に強い方は、国際情勢が与えるエネルギーのマーケットへの影響についてスムーズかつ適切な判断ができるかとも思うので、グローバルな戦いを勝ち抜けるビジネスパーソンになれるんじゃないかと思います。
そして、エネルギー業界は変化も非常に多い領域ですので、雑多に入ってくる情報を大局観を持って整理する力というのも大切ですね。仮説を持って進めながら修正していく力があれば、きっとエネルギー業界においても非常に活躍できると思います。

いかにも、物事を多角的に学ぶ総合政策学部らしい在り方が求められる業界なんですね…!

福谷さん

おっしゃる通りです。ある1つの事象をどのように捉えるのかがすごく重要になってくるので、それは一つの領域に対して専門的に持っている知識よりも、多面的に捉える力が求められる業界になりますね。

総合政策学部のゼミ活動で痛感した自分の浅はかさ

総合政策学部での学びは、今どのような形で活きていますか?

福谷さん

先ほどもお話ししたように、総合政策学部は物事を多面的に捉える力を磨くのに非常に適した学び舎だと思っています。特定の学問に偏ることなくさまざまな分野の知見をお持ちの先生方がたくさんいて、そうした先生方から複眼的な視点で学べるカリキュラムが組まれていたなと改めて思っています。

またゼミの活動でも複眼的な考え方を身につけることができたと実感しています。今はないんですが、私は藤田ゼミに所属していて、そのゼミのテーマが「このクニ(日本)の今日的課題」で、非常に幅広いテーマだったからこそ生徒がそれぞれに課題への切り口を持っていたのがとても面白かったです。

そしてそうしたゼミでの議論に必要な力は、細かな知識ではなく、大枠を捉えて切り込んでいく力だったので、そうした力は実際に反復しながらやってみることで身についたと思っています。会社でも、同じようなシチュエーションが本当に多くあるなと実感しています。

卒業式で藤田先生と写る福谷さん

そうした学生生活のなかで1番学んだことはなんですか?

福谷さん

議論の中で自分の意見を持って発信することだと思います。総合政策学部では、リサーチフェアといって、卒業論文以外にも自分で問いをたてて研究発表する機会が多くあります。

また自分の考えを仲間に伝えるディスカッションの場も多く、それまでの準備の取り組み方はもちろん、そうした機会を通して自分の思慮の浅さを痛感したり、自分に足りないものに向き合ったりすることにも繋がりました。負けず嫌いな性格で、当時は意地を張っていたこともあったんですが、自分の改善すべき点に気づくことができ、それを支えてくれたゼミの先生や仲間には、感謝の気持ちでいっぱいです。

わかります… 誰かと議論する時ってつい自分が正しいと思いたくて熱くなってしまいがちなんですが、そうしたときに周りがちゃんと指摘してくれる環境って本当に大事ですよね。

福谷さん

そうですね。たとえ意見がぶつかったとしても受け止めてくれる仲間がいたことは、本当に恵まれていたと思っています。

ちなみに、印象に残っている授業はありますか?

福谷さん

印象に残っている授業はたくさんありますね…。1つあげるとすれば、EC(英語コミュニケーション)という英語のプレゼンテーションの授業ですかね。英語で喋るという経験だけでなく、プレゼン機会がたくさんあったため、プレゼンを準備から発表までやり遂げる過程でたくさんの力が身についたと実感しています。

他の学部ではあまり経験できないことかなと思うんですが、パワーポイントを試行錯誤しながら作成したり、メンバーと発表内容を考えてまとめたりと、これは今会社でやっていることと一緒なので、その経験は本当に現在に繋がっていることだなと思いました。

枠組みにとらわれない挑戦と失敗を

今の学生さんに伝えたいことはありますか?

福谷さん

2つあります。1つはいろんな失敗をしてほしいなと思います。総合政策学部にいると自分の浅はかさを自覚する機会が絶対どこかであるんじゃないかと思うのですが、自分自身そうした機会を通して懐が深くなったと思っています。

また考えが浮んだとしても、他の視点から考えると筋が通るのか、といったように複眼的なやり方で物事に対峙する力を身につけられたり、周りから指摘されたことを受け止められる寛容さを持てたり、失敗を通じてたくさんのことを学ぶことができました。

そしてもう1つは枠組みにとらわれないことです。私は学生時代、上ヶ原キャンパスにある吹奏楽部で日本一を目指して活動していたんですが、当初進学が決まったときは三田キャンパスには吹奏楽部がなく、キャンパスを移動しながら取り組むのは難しいのではないかと入部を諦めかけていました。でも入学式で吹奏楽部の演奏を聞いて感動し、やっぱりやりたい!と思って入部を決意したんです。

吹奏楽部のコンクール後の一枚

福谷さん

日本一を目指す部活だったので練習も厳しかったんですが、継続することでコンクールの全国大会に出場させてもらったり、阪神甲子園球場で演奏させていただいたり、かけがえのない経験と仲間を得ることができました。あのとき三田という枠組みにとらわれてチャレンジしていなかったら、今の自分はないなと思います。学生生活は本当に自由だと思うので、自分の中にある制約を取っ払って、やりたいことをどんどんやっていってほしいなと思います。

卒業後、吹奏楽部の同期とアメリカンフットボール観戦(甲子園ボウル)

本当に、努力が伝わるお話をありがとうございます…!

福谷さん

全然好きなことをやってただけで、当時は努力している感覚はなかったんですけどね(笑)

素敵です。改めて、貴重なお話を本当にありがとうございました!

福谷能男さん、ありがとうございました!

関西学院大学総合政策学部の大先輩である、福谷さん。

学生時代を過ごした総合政策学部では、物事に対峙する力を磨くだけでなく、自分を見つめ直すきっかけにも直面でき、その経験が今に活きていることを語ってくださいました。

大学という場所は、学術的な知識だけでなく、学び方や生き方の土台を模索しながら築いていける場所でもあるのかもしれません。

みなさんが枠組みにとらわれない大学生活を通して、たくさんの経験と失敗から多くを学んでいけますように。

<取材=諸富稜( 22期生 )>