
- インタビュー記事
NPO法人立ち上げ→三田市議会員へ。小杉崇浩さんが語る“ライフワーク”が見つかる大学生活の過ごし方とは?
2021年10月29日
「高校生のうちに、やりたいことを見つけなきゃ」と焦っていませんか?
「ライフワーク(一生をかけて極める仕事)は、大学生活や人との出会いの中で見つけるもの」そう話してくれたのは、学生時代に障害者支援を行うNPO法人『特定非営利活動法人WELnetさんだ』を設立し、現在は三田市議会議員としても活躍する関西学院大学総合政策学部の先輩、小杉崇浩さん。
小杉さんいわく、政治家の道を志したのは、学生時代に携わったボランティア活動がきっかけだったそう。
そんな小杉さんが総合政策学部で学んだのは、自分で答えを見つける力。
さまざまな人との出会いの中で自ら課題を発見し、現在も政治家として社会と向き合い続ける小杉さんに「自分だけのライフワークが見つかる大学生活の過ごし方」について教えていただきました。

昭和51年10月、静岡県浜松市に生まれる。
関西学院大学総合政策学部在学中にボランティアを通して障害者福祉に関心を持ち、ライフワークとすることを決意。関西学院大学大学院総合政策研究科在学中に、特定非営利活動法人WELnetさんだを設立。これまで縦割りで分断されていたWork(就労)、Education(教育)、Life(生活)の各分野を繋ぎ、包括的で継続的な支援体制を構築している。平成28年には、現場での支援だけではなく、政治的なアプローチをすることの重要性を感じ、三田市議会議員選挙に立候補、当選。現在2期目を務める。「障害の有無に関わらず、誰もがやりたいことに挑戦できるまちの実現」を目指し、常に市民目線で活動している。
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大学時代の福祉ボランティアをきっかけに、政治家の道へ

小杉さんは、5年前に三田市の三田市議会議員選挙に当選されていますよね。
小杉さん
はい。初めて立候補したのが平成28年で、今は2期目になります。
諸富君は、政治家が普段どんな仕事をしているかご存知ですか?

うーん……国や地域の仕組みを考える仕事でしょうか?
小杉さん
うんうん、その通りです。国や地域に関わる予算や条例などを、何度も何度も話し合ってより良いものにしていくのが、私たち政治家のお仕事なのですが……

(よかった……あってた!)
小杉さん
実は、政治家にもいくつか種類がありまして。
まずは、ニュースなどでよく見かける国会議員。これは、国民から選挙によって選出された、国民を代表し、日本という国全体のことを考える人ですね。
一方、私のような市議会議員は、三田市内に住む市民のみなさんによって選ばれています。簡単に言えば、三田市民の代表。
市民のみなさまからいただいた声を元に、議会で提案したり、さらに議論して修正したり。普段は、そんなお仕事をさせてもらっています。


小杉さんが政治家を志したきっかけについて教えていただけますか?
小杉さん
はじまりは、大学時代のボランティア活動でした。
総合政策学部の在学中に、障害のある方と沢山出会わせていただいたんです。
ところが、いざお話を伺ってみると、まだまだサポートが足りていなかったり……障害のある方がのびのびと暮らせる社会が十分に整っていないことに気がついて。
『じゃあ、自分に何ができるんだろう?』と考えて、大学院生の時に立ち上げたのが『特定非営利活動法人WELnetさんだ』でした。

在学中にNPO法人をつくるなんて……すごい……!
NPO法人(特定非営利活動法人)とは
株式会社や合同会社などと違い、利益を目的とせず、ボランティアに近い活動を行う法人のこと。
小杉さん
障害のある人への支援活動は、学生時代からずっと私のライフワークですね。実は現在も、NPO法人の活動は続けているんです。
ただ、長年『特定非営利活動法人WELnetさんだ』として活動していくうちに、さまざまな制度面での限界を感じるようになって。

国や地域の制度が整っていないと、せっかくの支援が十分に行き届かない、ということでしょうか?
小杉さん
おっしゃる通りです。
政治って一見遠い話のように思えて、私たちの暮らしに深く繋がっているんです。
例えば、税金の使い方ひとつでも、世の中は大きく変わりますよね。
『障害の有無に関わらず、誰もがやりたいことに挑戦できるまちをつくるためにはどうすればいいんだろう?』そう考えた時に、初めて現場の支援だけではなく、政治的なアプローチが必要だと思ったんです。


これは僕の勝手なイメージかもしれませんが……政治家のみなさんは、表に出る機会が多い分、時には批判されることもあるかと思います。
すごく大変なお仕事だと思うのですが、やりがいや楽しさは、どうやって見つけられていますか?
小杉さん
正直、楽しいという感覚とは少し違うかもしれません。
だけどその分、やりがいは大きいです。
市民の方からいただいたリアルな声を議会の場で提案して……少しずつだけど、世の中が動いていく。
それに気づいた市民の方がときどき『あの時小杉さんが動いてくれたから変わりました』と、声をかけてくださるんですよ。それが何よりも嬉しく、やりがいを感じる瞬間ですね。

人との出会いが自分の可能性を広げてくれる

政治家になりたいと思ったら、具体的にどんなことをすればいいんでしょう?
小杉さん
市議会議員選挙に立候補するだけなら、25歳以上であれば誰でもできます。
だけど、市民のみなさまから選んでいただくためには、気持ちが伝わらなくちゃいけない。
だから立候補をする前に、まずは自分の中で『確固たる強い気持ち』をもつことが大切だと思います。


強い気持ち……。つまり、信念のようなものでしょうか。
小杉さん
そうですね。まずは、どんな課題を解決したいのか。どんな社会をつくりたいのか。自分の言葉で言語化できるまで、しっかりと考えることが大切です。

なるほど。でも、それって高校生や大学生には、かなりハードルが高いような……。
小杉さん
もちろん、今はできなくても大丈夫。
こんなことを話している私も、昔は自分のことがよくわかっていなかった気がします。
だけど、それでいいと思います。
大学生活の中で、さまざまなことを経験して、沢山の人に出会っていく。そうすれば、自分の視野は、自然と広がっていくと思うんです。

確かに僕も、大学時代に沢山の大人に出会って、世界が一気に広がったような気がします。
自分だけのワークスタイルや価値観、そして強い思いを見つけていく。
そのための大学生活と考えれば、なんだかワクワクしてきますね。
小杉さん
そうそう、大学生活の中で少しずつ見つけていけばいいんです。
自分が知っている世界は、まだまだ限られている。選択肢って、人と出会ったり色々経験していくうちに、少しずつ広がっていくものじゃないでしょうか。
例えば私の場合、学生時代に『農業研究会』というサークルをつくっていたのですが……


学生時代の小杉さんの行動力、すごすぎる……!
小杉さん
農業と福祉って、それぞれ別のものに思いますよね。
だけど続けていくうちに、ある日ふとこの2つを上手に掛け合わせれば、障害のある方の活躍の場がつくれるんじゃないかと思ったんです。

それは、素敵なアイディアですね。
小杉さん
当時はぼんやりとしていた『農福連携事業』が、最近なってようやく形になりはじめていて。
学生時代に夢中になっていたことが、確かに今に繋がっているんだと、改めて実感しました。

関西学院大学総合政策学部は「答えを見つける過程」を学んだ場所
小杉さんからみた、総合政策学部の魅力について教えていただけますか?
小杉さん
自分で答えを見つける過程が学べることですね。
一般的な学問は、ゼロから何かをつくるのではなく、すでに先人が導いてきた考えを深く掘り下げていきますよね。
だけど、総合政策学部での学びは、深く掘り下げつつも、さまざまな知識を横断的に掛け合わせながら自ら課題を見つけていく。探究心が身についたと思います。

小杉さんにとって、総合政策学部での学びはまさに『知識の掛け算』だったんですね。
小杉さん
はい。それから、「ヒューマン・エコロジー」や「総合政策A」「総合政策B」など……世の中の仕組みを広い視点で考えられるカリキュラムも豊富ですよね。
当時の学びは、確固たる理念として、今も息づいている気がします。

自分で何かやってみたい、考えてみたいという学生にはぴったりの学部ですよね。
なんだか、総合政策学部で学んだ日々が懐かしくなりました。
最後に、関西学院大学総合政策学部を目指す高校生や在学中の学生にひとことメッセージをいただけますか?
小杉さん
世の中には本当にさまざまな価値観があって、それは人それぞれ違うものです。
私がそう気づけたのは、大学生活を通して沢山の人と出会ったから。
誰かと話すたび『なるほど、こんな考え方もあるんだ』『こんな生き方もあるんだ』と新たな発見もあれば、自分の考えがいかに一方的であったか……反省させられることもあります。
それでもみなさんには、沢山行動して、年代や性別を問わずひとりでも多くの人と出会っていただきたいです。
それはきっと、生き方の選択肢を広げることに繋がるから。
そしていつか、強い気持ちをもって、あなただけのライフワークを見つけてください。
関西学院大学総合政策学部の一先輩として、みなさんの未来を心から応援しています。



関西学院大学総合政策学部の大先輩である、小杉崇浩さん。
三田市議会議員として市民の声にそっと寄り添うことができるのは、学生時代にさまざまな人と出会い、多様な価値観を吸収してきたから。
高校生のみなさんは、これからはじまる大学生活に期待を膨らませていますか?
それとも「自分には、やりたいことなんてない」とモヤモヤしていますか?
今はまだ、自分が本当にやりたいことが見つからなくても大丈夫。
人との出会いも、経験も、そしてあなただけのライフワークも……大学生活での経験や人との出会いの中で、少しずつ広がっていくはずだから。
<取材=諸富稜( 22期生 )>